研究概要 |
イヌおよびウマの炎症性血清中サイトカインの検出法:これまでヒト,ラットおよびマウスで用いられている生物学的測定法をイヌ・ウマの血清中サイトカイン活性の検出への応用を検討し,ヒトメラノーマA375S1細胞,IL-6依存性マウスハイブリドーマMH60・BSF2細胞,およびWEHI164マウス肉腫subclone28-4細胞によりそれぞれイヌのIL-1,IL-6およびTNF様活性の検出が可能であることが判明し,その測定条件を確立した。また,ウマについても同様に検討したところ,サイトカインの測定条件はイヌのそれとほぼ同様であった。 急性相反応期におけるサイトカインと急性相蛋白の関連性:血清IL-1様活性は実験的にエンドトキシンショックを引き起こしたイヌで,血清IL-6様活性およびTNF様活性はエンドトキシンショック下およびテレピン油を筋肉内に投与して実験的に急性炎症を引き起こしたイヌで検出された。ウマにおいては血清IL-6様活性の著増がみられたが,IL-1およびTNF様活性の変動はみられなかった。 血清アミロイドA蛋白(SAA度を定量するためのサンドイッチELISA法:精製ウマSAAを家兎に免疫して得られた抗ウマSAA血清をアフィニティクロマトグラフィーで精製した精製抗体を用いて,サンドイッチELISA法を行うことにより,特異性が高く,良好な再現性が得られた。ここで確立したELISA法と単純免疫拡散法で得られた測定結果を比較したところ,両者の間には高い相関性が得られた。 SAA濃度を半定量するためのスライド逆受身ラッテクス凝集反応(RPLA)法:アフィニティークロマトグラフィーで精製した抗ウマSAA抗体を250ng/cm^2latexの割合で粒径0.2μmのラテックス粒子に感作後,1%の割合でグリシン緩衝液に懸濁させ,室温で60分間反応させて肉眼で凝集を判定した。なお,濃度判定の一次標準にはSAA陽性HDLを使用した。今回確立したRPLA法は半定量法であるが、迅速,簡便で再現性も良好であった。また,本法の結果とサンドイッチELISA法で得られた測定結果を比較したところ,両者の間に高い相関が得られた。 総括:ウマでは炎症に対する反応性が最も速い蛋白はSAAでありELISA法やRPLA法は臨床の現場でも有用なSAA濃度測定法と考えられた。また,ウマやイヌの実験結果から,SAAの様な急性相蛋白のプロモーターとしてのサイトカインとして,IL-6が最も重要と考えられた。
|