研究概要 |
1)異性双子雌牛の臨床所見,染色体分析およびPCR法による分析結果 異性双子として生まれた雌子牛の膣長を測定したところ,膣長が10.0cm以下の雌牛は7頭で,その長さは4.5-6.5cm(平均5.7cm)であった.また,膣長が10.0cm以上の雌牛は2頭であった.これらの雌牛から,性染色体キメラの有無,PCR法によるY染色体特異的反復配列の有無を分布した.その結果,膣長が10.0cm以下の雌牛では,すべて性染色体キメラが認められ,そのXY細胞比は16.0-96.7%(平均57.3%)であった.また,これら全例とも,PCR法によってY染色体特異的反復配列の存在が確認された.一方,膣長が10.0cm以上の雌牛は2頭のうち,1頭では性染色体キメラが認められず,PCR法によってY染色体特異的反復配列の存在は否定された.さらに,残りの1頭では,性染色体キメラ(XY細胞比:53.8%)が認められるとともに,PCR法によってY染色体特異的反復配列の存在が確認された. 2)ホルモン剤投与試験の結果 異性双子の雌として生まれ,染色体およびPCR法によってフリーマーチンと診断された9頭(FM群)と,正常雌牛と診断された5頭(Normal群)にeCGとhCGを投与して,投与期間中の血中E_2値およびP値をRIA法とEIA法によって測定した.その結果,Normal群ではホルモン処置後に血中E_2値は上昇を開始し,8日にはピークに達して,その後は減少した.また,P値はE_2値の上昇に伴って上昇し,12日にはピークに達した.それに対して異性双子で出生し,性染色体キメラを示すFM群では血中E_2とP値のいずれもが低い値で推移した.また,簡便なEIAキットを用いて血中P値を測定したが,RIA法による測定結果とよく一致することが認められた.
|