研究概要 |
今年度、Om/N系ラット(現在59週齡まで観察中)に加え、F344ラット(現在42週齡まで観察中)を導入し、比較検索した。Om/N系雄では、尿蛋白排泄量(点灯時、6時間)は6週齡までは同系の雌や、F344ラットと差が認められなかったが、10週例で他と比較し、有意に増加し(16.2mg〜27mg/6h)更に59週令まで高度蛋白尿を排泄した(最高値:260mg/6h)。SDSによる分析では95KD(アルブミン)の蛋白が主体で、210KDの蛋白も少量認められた。その後、95および210KD以外の高分子蛋白のバンドが出現し、26週令では尿泳動パターンが血清のそれとほぼ同様になり、これは腎の組織障害程度と良く一致した。F344ラットの尿中蛋白の等電点がpH5.3である時、尿蛋白が増加したOm/N系雄ラットでは、これらに加えて等電点4.6ならびに等電点5.7付近にそれぞれ数本のバンドが出現した。尿蛋白増加時の尿中に現れる蛋白は、生理的pHではいずれも陰性に荷電しているがその陰性度は、対照のもの(pH5.3)を挾んで、幅広く分布していた。これら、Om/N系ラットの尿中に出現した様々な等電点の蛋白の分子量を解析中である。Om/N系雌ラットの尿の異常、腎障害は本質的に雄のそれらと同様であるが、その発現は非常に遅く、非選択的蛋白尿が出現するのは55〜59週齡であった。カチオニック・ゴールドで系球体基底膜(GBM)1μmあたりの陰性荷電部(AS)を観察すると、Om/N系雄ラット外透明層では5日齡〜3週齡で3.863+1.697,6週〜8週3.596+2.450,14、18および25週で3.326+1.071でほとんど変化しないのに対して、対応する週齡のSDラットの外透明層では3.139+1.695,6.670+2.2361,5.485+1.793であり、Om/N系ラットでは加齡に伴ったASの漸増がなく、かつそれはSDラットと比べ有為に低いことがわかった。このことから、本ラットに認められる蛋白尿発現にはGBMにおけるAS異常が関与することが示唆された。昨年度の研究より、特に精査が必要と思われた細胞外基質、IV型コラーゲンとヘパラン硫酸プロテオグリカン(HSPG)について、5週齡〜59週齡までその変化を免疫組織学的に観察し、係蹄-ボ-マン嚢癒着部での増加・蓄積が糸球体障害増悪に関与することが明らかになった。なを、GBMにおける2ASの変化については、さらに感度が高いと考えられるポリエチレンイミンを用いた方法で、観察中である。免疫電顕法によるHSPGの解析はまだ終了しておらず、蛋白尿発現の引き金となる現象は現在まで捉えることが出来ていない。インテグリンについては抗体の反応性が悪く結果が得られなかった。
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