研究概要 |
ニンジン培養細胞のアントシアン合成をモデル系としてUV-B耐性の研究から、アントシアン合成がUV-B光受容体を解して鍵酵素であるフェニールアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)やカルコンシンタゼの遺伝子の発現レベルでUV-B光により制御されていることを示した。本研究では、ニンジンのPAL遺伝子の1つであるpal10遺伝子を取り上げその全長プロモータ(2335)をレポータ遺伝子(ルシフェラーゼ)につなぎ融合遺伝子を作成し、エレクトロポレーション法でニンジンのプロトプラストへ導入し、一定時間暗培養後のルシフェラーゼ活性をモニターし、プロモータ活性を評価した。暗培養中UV(260,280,300nm)光パルスを与え、得られた光量一反応曲線を解析し以下の点を明らかにした。 (1)pal10の全長プロモータの発現はニンジン細胞同様UV-B光に特異的であり、その作用スペクトルは、280nmにピークを持ちUV-B光受容体を介して制御されていることが示された。(2)しかしpal10プロモータに5′側から削り込みを行うと、570の点で既に、UV-B応答性エレメントを含むにもかかわらず、UV-B特異的応答性は失われた。570上流断片とCaMV 35coreプロモータから融合プロモータを作成し、調べたが上流にはUV-B特異的応答性は見られなかった。(3)しかし 570下流の断片について融合プロモータを作成し調べたところ395下流に2つのUV-B特異的エレメントが存在することが判明し、コンセンサス配列としてT(A)XTCXCCAACCC(A)を得た。(4)5′欠損プロモータ融合プロモータの光量一反応曲線の解析から上流や下流の配列はUV-Bエレメントに対し抑制的に働くが、pal10プロモータの正確な発現には、これらの配列の相互作用も必要であると考えられた。
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