研究概要 |
トランスゴルジ網様体(TGN)は,ゴルジ装置の最もトランス側に位置するコンパートメントであり,分泌の中枢と考えられている。本研究では,調節性分泌機構,特に分泌顆粒形成を含むソーティングの素過程に関与すると予想される分子が内分泌細胞のいずれのオルガネラに局在し,ホルモンの分泌動態と関連してどのように分布するかを免疫細胞化学的に明らかにするために行われた.低分子量G蛋白質(Rab6,Rab3)や三量体G蛋白質は,細胞内の物質輸送の鍵となる分子であるので,今回これらの分子に対する抗体を作製した.1.Rab3,Rab6,γ-アダプチン,TGN38のアミノ酸配列から,親水性でかつアミノ酸配列の相同性の低い領域を予測した.2.その部分のペプチドを合成し,ウサギに免疫し特異的な抗ペプチド抗体を得た.3.いずれの抗体もラット下垂体前葉のホルモン細胞を特異的に染めた.4.Rab6,γ-アダプチンはゴルジ領域を特異的に染めた.5.下垂体ホルモン産生細胞のモデル細胞であっるACTH産生腫瘍由来のAtT-20細胞や成長ホルモン産生腫瘍由来のGH4C1細胞でも同様な結果を得た.6.三量体G蛋白質のうちGsα,Gi3αに対する抗体は細胞膜を強く染めた.7.Rab3Aに対する抗体はラット下垂体のACTH細胞の分泌顆粒を,またRab3BはGH4C1細胞の分泌顆粒を強く染めた.このように同じRab蛋白質でも種類によりその局在が異なることが明らかにされた.今後,TGN38の抗体によりTGNの構造を明確に同定した上に,Rab6,Rab3や三量体Gタンパク質の抗体で二重標識を行い,それぞれの分子の局在を比較検討し,局在性の差異からTGNにおけるソーティング機構におけるそれぞれの分子の役割を考察したい。
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