研究概要 |
精細管を取り巻いている筋様細胞はすべてのほ乳類に存在するが,その構造や配列は動物種によって異なる.実験用げっ歯類では,単層の偏平な細胞で,上皮細胞の様に結合装置をもつ.人や他の動物では,数層である.筋様細胞には沢山のアクチン細糸がある.ラットでは一個の筋様細胞に互いに直交するアクチン細糸の束があり,精細管にたいして輪状および縦走している.この束は精子形成と関係があり,実験的停留精巣をつくると,アクチン細糸束は断裂する.またこの束の形成過程をラットの生後発生においてしらべた.そのほかの細胞骨格性細糸(ミオシン,アクチニン,ビメンチン)が筋様細胞に局在している.筋様細胞は収縮性で精細管内精子と液体の輸送に関係しているのみでなく,いろいろな活性物質(アンドロゲンレセプター,プロスタグランヂン,TGF)の影響を受けるので,筋様細胞は単に解剖学的に精細管を取り巻く細胞でなく,その機能は精子形成,セルトリ細胞への関与,問質細胞,血流調節等に作用すると思われる.人では,筋-線維芽細胞(myofibroblast)として,細胞外の結合組織線維で結合し,筋細胞と結合組織細胞の両方の抗原を発現している.また,収縮機能はNO/cGMP系によって調節されている.
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