研究概要 |
1.胚体節における筋蛋白質の発現順序:ニワトリ胚頸部体節において,筋原線維を構成する筋蛋白質の出現順を蛍光抗体法により調べた。その結果、これらは同時には合成されず,Hamburger-Hamiltonのステージ11-15の間に5つのグループに分れて出現することが明らかになった。また親型の筋蛋白質アイソフォームの出現は,筋原線維を構成する主要蛋白質の出現が完了していることを必要としないことがわかった。胚型トロポニンCの場合,mRNAの発現は蛋白質より1ステージ(約3時間)早かった。 2.再生骨格筋におけるジストロフィンとトロポニンの発現:ニワトリの前(遅筋)および後広背筋(速筋)に凍結損傷を与えて筋再生を起こさせ、ジストロフィンと筋蛋白質トロポニンの発現を経時的に蛍光抗体法により調べた。再生骨格筋線維では、トロポニンは胚型のものが出現したあとにジスロトフィンが細胞膜上に点状に出現し、またジストロフィンが細胞膜上に均一に分布するようになったあとにトロポニンは親型に変換するのをみた。神経支配の切除はジストロフィンの発現には影響を与えなかったが、トロポニンは成熟したのちに再び胚型にもどるのが観察された。すなわちジストロフィンとトロポニンの遺伝子発現は別々に調節されており、神経はこれらの蛋白質の発現に異なって作用することが考えられた。 3.筋原線維形成過程における筋蛋白質の動態:ピオチン標識アクチンとミオシンを培養心筋細胞に導入すると,アクチンは近位部の筋原線維ではそのA帯周辺に,ミオシンはA-I接合部に集合するのが観察された。従って各蛋白質はこのような部位で重合して筋原線維の直径が増加すると考えられた。蛍光標識アクチンを培養心筋および線維芽細胞に導入し、構造に取り込まれた標識をレーザー光で漂白し,その回復を追跡することにより、アクチンのダイナミクスを追求した。アクチンは筋原線維ではストレスファイバーより,また筋原線維の横紋のある部分はない部分より安定していた。筋原線維では非筋アクチンは筋アクチンより交換に時間がかかったが,ストレスファイバーでは両アクチンに差はなかった。
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