研究概要 |
血管及びリンパ管の新生機構の解明は,異常血管増殖あるいは虚血性疾患の治療法を開発する上で,極めて重要である.本研究はcompound48/80のラット腹腔内投与により,腸間膜に血管・リンパ管を新生させ,その新生機構を形態学的に解明するために行われた. 血管は細静脈または毛細血管から毛細血管の芽capillary sproutsとして新生されていた.周皮細胞は新生血管の基底面に長い突起を巻き付けているが,間質の方に伸びた突起もしばしば見られた.新生中の血管周囲に周皮細胞類似の細胞(デスミン陽性)がしばしば見られた.また,周皮細胞は毛細血管にある典型的な形態のものから,血管が太くなるにつれて,平滑筋細胞の形態のものに移行していた.これらのことから,間質中の線維芽細胞の一種が周皮細胞になり,さらに平滑筋細胞になることが示唆された.さらに,周皮細胞が血管内皮細胞の伸長をたすけるガイド役を果たしている可能性も示唆された. リンパ管新生には,既存のリンパ管から発芽して形成されるものと,遊離した島状の構造として形成されるものとがあることが明らかとなった.しばしば,新生リンパ管に,それと平行に走る血管からの芽が接している像が見られた.このことは新生血管の芽あるいは,その周皮細胞が,血管とリンパ管の位置関係を一定に保つための機構,あるいはリンパ管新生のガイド役をしているものと思われた. 本研究はcompound48/80を用いた実験であるので,今後,さらに正常状態及び発癌状態などでの血管・リンパ管新生の研究が重要であると考えられる.
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