研究概要 |
体液恒常性維持における消化管の役割を調べるため、次の2つの実験を行った。 1)空腸内圧上昇が空腸Na吸収に及ぼす影響: 麻酔下のイヌを用い空腸ループ内圧を70-100mmHgに上昇させると,ループでのNa吸収は減少した.ループを支配する外来性の神経を切断し,内圧を上昇させると,ループでの吸収は負,すなわち分泌になった.ループ内圧上昇時求心性神経活動は増加し,遠心性神経活動も増加した.以上の結果から,空腸内圧上昇時にはNa吸収を抑制し,Na分泌を起こす機構が存在する.外来性の神経はこの機構に拮抗し,内圧上昇時のNa分泌を抑えるように働く. 2)空腸でのNa吸収に対する弧束核の役割: 麻酔下のラットの延髄弧束核にカイニン酸を注入する前後での腸間膜神経活動と空腸ループからの水とNa吸収量の変化を測定した.カイニン酸注入に先立って,カイニン酸の代わりに人工脳脊髄液を注入しても空腸ループからの吸収に変化は見られなかった.一方,カイニン酸の注入によって,水,Naの吸収とも増加した.この増加は,α2ブロッカーであるヨヒンビンにより完全に抑制された.更に,腸間膜神経活動はカイニン酸注入により1.6倍に増加した.以上の結果から,空腸での水とNaの吸収はα2アドレナリン機構を介し,弧束核によって緊張性に抑制されていることが明らかになった.
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