研究概要 |
心筋が虚血に陥るとATP感受性K^+チャネル(K^+_<ATP>チャネル)が活性化すると考えられている.この研究では単離心室筋細胞を特殊なチャンバーを用いて無酸素に暴露(すなわアノキシア)することにより,まずK^+_<ATP>チャネルが開口することを示し、つぎにアノキシアによるK_<ATP>チャネル開口のメカニズムを明らかにすることを目的とする. [方法]コラゲナーゼで処理で得たモルモットの単離心室筋細胞からパッチクランプ用電極により活動電位と膜電流を記録した.アノキシアは,外気の流入を妨げるよう特別に工夫した「空気遮断チャンバー」内に細胞を置き,無グルコースのアノキシアタイロード液を灌流することにより行った.[結果]アノキシア13±3分後に活動電位持続時間(APD)は対照の20%にまで短縮したが,正常液による再灌流により急速かつ完全に回復した.アノキシアにより時間非依存性の大きな外向き電流が活性化されたが,これは正常液再灌流またはK_<ATP>チャネル遮断薬グリベンクラミド添加により容易にブロックされた.アノキシア(無グルコース)の最中にグルコースを加えてもAPDは短縮のままであった.アノキシアが長くなると正常液で再灌流してもAPDは回復せず,またアノキシアと再灌流を繰り返し行なうと,再灌流によるAPDの回復は次第にみられなくなった.[結論]単離心室筋細胞をアノキシアにすると,1.K_<ATP>チャネルが活性化されることを確認した.2.このK_<ATP>チャネルの活性化,脱活性化に直接関与しているATPは,酸化的りん酸化によって生じるATPであった.3.嫌気的解糖によって生じるATPは,酸化的りん酸化によるATP産生が著しく障害されたときに限りK_<ATP>チャネルの活性化,脱活性化に関与していた.4.アノキシアを繰り返すとAPD回復がみられなくなるのは,解糖が障害される結果ATP産生に必要な基質が消失するためと考えられる.
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