研究概要 |
申請者は以前より、消化管諸機能の制御機構に関する研究を行い、消化管の粘膜上皮からのクロライドイオン分泌が壁内神経叢により制御されていることを明かにした。更に、クロライドイオン分泌反応の制御機構には、アセチルコリン以外にSubstance PやVIPなど代表される神経ペプチドも深く関与していることも明かにした。しかしながら、伝達物質の放出動態に関する研究は、その測定の技術的困難さのために詳細な検討がなされていない。本年度は、消化管粘膜でのイオン輸送における制御機構を明かにするため、神経刺激による神経ペプチド、特に血管作動性ペプチド(VIP)の放出動態の検討を行った。 結果は以下の通りであり、研究成果はアメリカの共同研究者と共にJournal of Pharmacology and Experimental Therapeutics 269巻:1124-1129、1994に発表した。 研究実績の概要 VIP,PHI,helodermin及びPACAPの漿膜側への適用により、用量依存性に短絡電流は増大した。VIP(10-28)の前処置により、VIPによる短絡電流の増大は有意に抑制された。VIPによる短絡電流の増大はテトロドトキシンあるいはアトロピンの前処置により減少した。高カリウム或いはカルバコール刺激により内因性のVIPが放出された。また、VIP(10-28)は上皮膜に存在するVIP受容体へのVIPの結合を抑制した。以上の結果はVIPがモルモット下部大腸でのイオン輸送制御機構における神経伝達物質として機能していることを示唆している。
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