研究概要 |
私たちはウレタン・クロラロースで麻酔したイヌの生体内空腸で,粘膜を機械的に刺激するとセロトニンが遊離され,これが5-HT3レセプターを刺激して蠕動反射が誘発されることを明らかにしていた(Neya,T.et al,1993,J.Physiol.471,159-173).この研究では,粘膜の機械的刺激によって誘発される蠕動反射の上行性収縮を指標にして,5-HT3レセプターの局在部位を検討し,腸粘膜から内分泌されるセロトニンによって蠕動反射が引き起こされることを明らかにすることが出来た. 1.5-HT3レセプター拮抗薬ondansetronを刺激部位の粘膜面に塗布したときの上行性収縮の抑制率と動脈血流を介して刺激部位へ適用したときの抑制率とには有意差がなかった. 2.5-HT3レセプター刺激薬2-methyl-5-hydroxytryptamineを肛門側粘膜に塗布すると用量依存性に上行性収縮が誘発され,この反応は5-HT3レセプター拮抗薬の粘膜面への適用で遮断された. 3.2-methyl-5-hydroxytryptamineの動脈投与によって誘発される上行性収縮も5-HT3レセプター拮抗薬の粘膜面への適用によって遮断された. 4.腸粘膜のEC細胞からセロトニンの遊離を起こすことがしられている高張のブドウ糖溶液あるいはコレラトキシンを粘膜の局所に塗布すると上行性収縮が誘発された. 5.腸粘膜のEC細胞の基底膜側には知覚神経終末が豊富に分布すること,5-HT3レセプターは知覚神経に存在することがよく知られている事実である. 6.これらの結果から,蠕動反射には腸粘膜のEC細胞で内分泌されるセロトニンが5-HT3レセプターを有する知覚ニューロンを刺激して活性化される経路の存在,すなわち消化管運動調節系に内分泌-腸内反射系の存在が明らかになった.
|