研究概要 |
新生ラットの摘出脊髄標本を用いて痛み刺激による反応を電気生理学的に記録し、その反応に対するNO(一酸化窒素)に関連する薬物の作用を検討した。新生ラット摘出脊髄・末梢神経・皮膚標本を用いて、皮膚にcapsaicinやbradykininのような痛み刺激を与えた時に起きる脊髄前根の脱分極を細胞外記録した。この痛み刺激誘発脱分極に対するNO関連薬物の作用を調べた。 (a)NOガスを通気した潅流液,あるいはNOを放出する物質であるsodium nitroprusside(SNP)やS-nitroso-N-acetyl-penicillamine(SNAP)を脊髄に適用してその作用を調べた。NOガス,SNP,SNAPは痛み刺激で誘発される前根の緩徐な脱分極を抑制した。またこれらは同時に運動ニューロンの脱分極を起こした。またcyclic GMPアナログの8-bromo-cyclic GMPを脊髄に適用しても同様の反応が起こった。(b)NO scavengerのoxyhemoglobinやhydroxo-cobalaminはSNPやSNAPの作用に対して拮抗した。(c)NO合成酵素阻害薬のN^ω-nitro-L-arginine methylesterやN^ω-methyl-Larginineは痛み刺激誘発に緩徐前根脱分極を増強した。さらにこれらのNO合成酵素阻害薬の作用はL-arginineによって拮抗された。 以上より脊髄内でNOが痛み刺激による反応を増強および抑制の両方の作用で修飾していることが示唆された。
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