内皮細胞由来過分極因子(EDHF)にり活性化される血管平滑筋細胞膜Kチャネルの電気生理学的性質を明らかにする目的で以下の実験を行った。 1.EDHFにる膜過分極に対する Kチャネル抑制薬の効果 モルモットならびにウサギ頚動脈平滑筋細胞膜はアセチルコリン(ACH)によって遊離されたEDHFにより過分極する。各種Kチャネル抑制薬の過分極反応におよぼす効果をしらべたところ、その抑制の強さはプロカイン>Baイオン>TEA=4-APで、グリベンクラミド、カリブドトキシン、アパミンには抑制効果が認められなかった。これらの薬物のKチャネルに対する選択性から、EDHFによる活性化されるのはATP感受性Kチャネル、Ca活性化Kチャネル、遅延整流Kチャネルなどではないと思われた。 2.培養内皮細胞から遊離されるEDHF ウシ大動脈から採取した内皮細胞を培養し、ビーズ上に増殖させ、ブラジキニンで刺激するとEDHFが遊離された。このEDHFはモルモット冠動脈平滑筋細胞膜を過分極させ、筋を弛緩させた。このEDHFにる過分極は外液カリウム濃度を低下させると振幅が増大したが、グリベンクラミドやTEAでは抑制できなかった。 3.単離血管平滑筋細胞におけるEDHFによる膜電流の変化 モルモット頚動脈を酵素処理し、平滑筋細胞を単離した。パッチクランプ法により、等張カリウム液中において通電により誘発される膜電流を記録した。内皮細胞からブラジキニンにより遊離されたEDHFはこの膜電流を変化させなかった。 以上の結果から、EDHFは血管平滑筋のカリウムチャネルを活性化させ、膜を過分極させるが、関与するKチャネルについては、これまで報告されているようなKチャネルではないことが判明した。しかし、その種類までは特定できなかった。
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