研究概要 |
初年度ヒトアルドース還元酵素(AR)cDNAをプローブとして25個のマウスAR候補遺伝子クローンを単離した.しかしこの中にマウスARとして報告されているmouse vas deferens protein(MVDP)に相当するもの無く,改めてラットARのcDNAをプローブとしてマウス腎臓cDNAライブラリーのスクリーニングを行った. 得られたクローンの塩基配列はMVDPとは異なっており,その推定アミノ酸配列はラットARと97%一致していた.本cDNAの蛋白コード領域を大腸菌系にて発現した組み替え蛋白はARとしての酵素学的特徴を示したことから,MVDPはマウスARとは異なった蛋白であり,今回単離したクローンがマウスのARをコードするものであることが明らかとなった. そこでさらにARの近縁蛋白mRNAの腎臓における局在について検討した.ARmRNAはマウス腎臓でinner medullaとpelvisに局在が認められた.一方,MVDPと最近新たなAR近縁蛋白として報告されたfibroblast-growth-factor-1-regulatated protein(FR-1)とは腎臓juxtaglomerular cellsに局在することから,ARと構造の類似した近縁蛋白は全く異なった生理機能を担っている可能性が示唆された. 得られたマウスARcDNAの塩基配列をもとにプライマーを合成し,先に単離した25個のクローンよりARの遺伝子を同定するためにPCRスクリーニングを行った.この中の2個のAR遺伝子クローンについてイントロン構造を認めたので,制限酵素地図を作製し,全エクソンの配列解析とエクソン・イントロン境界部位を決定した.現在マウスAR遺伝子のエクソン2と3をターゲットとしたノックアウト用ベクターの作製を進めている.
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