細胞周期G1期の制御機構を明らかにするために、分裂酵母の変異株を宿主とした異種間、同種間遺伝子相補クローニング法を用いて、G1期制御遺伝子の単離・解析を行っている。本年度は、1)patl温度変異の遺伝子相補により、動物細胞及び分裂酵母のG1期制御遺伝子の単離を行った。2)Cdc25Aの標的の解析。 1)分裂酵母のゲノムライブラリーより、Nrdlと名付けた新しい分化抑制因子を単離した。RNA結合蛋白ドメインを持ち、分化の開始に必須なStell転写因子の発現調節に深く関わっていることがわかった。また、NRK(normal rat kidney cell)由来のcDNAライブラリーより、Nrdl遺伝子のラットホモローグと考えられる遺伝子の単離にも成功し、現在、その機能解析を行っている。 2)Cdc25Aホスファターゼは、その発現がG1後期からS期で見られることから、その標的として、Cdk関連キナーゼが考えられる。その内で、細胞周期の開始に必須なcdk4キナーゼに焦点をあてた。cdk4キナーゼもcdc2キナーゼと同様に、17番目のチロシン残基の脱リン酸化により活性化される。そこで、17番目のチロシン残基をフェニルアラニン残基に改変し、動物細胞内へ導入して解析した結果、このキナーゼには、G1からS期に進行する際、チロシン残基のリン酸化と脱リン酸化が起こり、この脱リン酸化の阻止が紫外線障害によるG1期停止機構に重要であることが明らかになった。
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