研究概要 |
アラキドン酸12-リポキシゲナーゼは,アラキドン酸の12番目の炭素に分子状酵素を導入して,12-ヒドロペルオキシ酸を生成する酵素である。この酵素には「血小板型」と「白血球型」の2つのアイソフォームがあり,脂肪酸との反応性,免疫原性,一次構造や遺伝子構造から区別することができる。私達はすでにヒト血小板およびブタ白血球の酵素のcDNAをクローニングし,その一次構造を決定したが,本研究では部位特異的変異法によって酵素の活性中心を分子レベルで解析した。 動物や植物のリポキシゲナーゼには非ヘム鉄が含まれており,すべてのリポキシゲナーゼのアミノ酸配列を比較すると,8個のヒスチジン残基が保存されている。そこで,ブタ白血球の12-リポキシゲナーゼのcDNAをtacプロモーターを持つpKK223-3に組み込み,部位特異的変異法によって8個のヒスチジンをそれぞれロイシンに置換して,変異酵素の触媒機能と鉄の含有量を調べた。361,366および541番目のヒスチジンを置換した酵素では,酵素活性がほとんど検出されず,鉄の含有量も著明に低下していた。128と356番目のヒスチジンの変異では酵素活性も鉄含有量も低下しなかった。426番目のヒスチジンの変異では,活性が野生型の5%に低下した鉄含有量には大きな変化がなかった。384と393番目のヒスチジンの変異酵素では酵素蛋白の回収率が非常に低く,また393番目のヒスチジンの変異酵素ではSDS電気泳動で分解産物と思われるバンドが認められ,これらの変異酵素の鉄分析は行わなかった。以上の実験結果より,ブタ白血球の12-リポキシゲナーゼでは361,366および541番目ヒスチジン残基が非ヘム鉄の結合に関与しており,酵素の触媒機能に重要であることが示された。
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