研究概要 |
1,昨年度の研究においてヒトFDCの一部のマーカー(抗CD21,抗CD23)が十分な酵素前処理を行なうことによって通常ホルマリン固定,パラフィン包埋切片上においても適応可能であることを見いだした。今年度も引き続きその検討を行ない、新たに抗CD35,抗NGFR,抗S100a抗体が通常のパラフィン切片でもかなり特異的にFDCと反応することを見いだした。これらの反応性を詳細に検討すると、抗CD21,抗CD35,抗NGFRはFDC全体と反応するが、CD23はリンパ瀘胞胚中心の明調帯に局在するFDCにのみ発現され、S100aは暗調帯に局在するFDCに主として発現されていることを見いだした。この観察結果はFDCの細胞学的あるいは機能的な多様性を示すものとして極めて重要であり、また胚中心の微小環境を考える上で興味深い所見と思われる。 2,上記の観察結果をこれまで集積した悪性リンパ腫の組織にもあてはめ、リンパ腫組織内のFDCの免疫組織学的形質をあらためて検討した。その結果、いわゆるpan-FDCマーカーで染色されるFDCは、従来よりその存在が知られてきた濾胞性リンパ腫にとどまらず、おおくのB-細胞性リンパ腫およびAILD型のT-cellリンパ腫でその組織内に広範に分布していることが見いだされたが、これらの大部分はS100aの陽性像を示さず、反応性リンパ瀘胞におけるFDCとは際だった相違を示した。このことから、一部その区別が困難であった瀘胞性リンパ腫と瀘胞性過形成についても鑑別の指標の一つとしてこのようなFDCの局在と免疫染色による検討が有用であることが示された。
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