研究課題/領域番号 |
06670185
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研究種目 |
一般研究(C)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
人体病理学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小田 秀明 東京大学, 医学部(医), 助手 (40214142)
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研究分担者 |
中鶴 陽子 東京大学, 医学部(医), 助手 (00237314)
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研究期間 (年度) |
1994
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研究課題ステータス |
完了 (1994年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
1994年度: 2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
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キーワード | 腎癌 / 肉腫様転換 / p53遺伝子 |
研究概要 |
我々は腎癌の増殖能を検討し、肉腫様の形態を示すいわゆる肉腫様腎癌では通常の腎癌に比べ極めて増殖能が高いことを明らかにしてきた。この現象にはどのよおうな遺伝子変化が生じているのかを本年度の研究で明らかにした。すなわち、肉腫様腎癌の肉腫様部位と通常の腎癌部位各々から別個にDNAを抽出し、PCRで目的とする遺伝子を増幅し、その遺伝子配列を検討した。対象とした遺伝子はp53遺伝子とH-ras遺伝子である。この結果、肉腫様部位にのみ高率にp53遺伝子に変異見いだした。肉腫様部位では14症例中11例にp53遺伝子変異があり、しかも、コドン244に11例中6例、コドン278に11例中8例の症例で変異が生じており、ダブルミューテイションも肉腫様部位に限って5例に認められた。一方、通常の腎癌部位では2症例に変異がみられたに過ぎなかった。また、単一に腫瘍内で通常の腎癌部位と肉腫様部位においてp53遺伝子のgenetic heterogeneityが9症例で見られた。このことは、腎癌が通常の形態から肉腫様に転換する際にp53遺伝子の変異が重要な働きをしていることを初めて明らかにしたものである。上記のp53遺伝子変異は全てアミノ酸の変化を伴うミスセンスミューテイションであったため、我々はp53タンパクの局在を免疫組織化学的に検討した。この結果、p53タンパクは遺伝子変異の部位と一致して検出され、主として肉腫様部位の腫瘍細胞核に存在していることを明らかにした。p53と共に検討したH-ras遺伝子には何れの部位にも変異を認めなかった。肉腫様腎癌は通常の腎癌が肉腫様転換したもので、組織学的には脱分化(dedifferentiation)の現象と考えられる。本研究で肉腫様転換に一致した遺伝子変異を我々が初めて明らかにしたと言えよう。
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