研究概要 |
1)Denys-Drash症候群におけるWT1遺伝子変異の解析:これまで解析した5例について詳細な解析を行った。そのうち,Wilms腫瘍および非腫瘍部腎でWT1遺伝子の両方のalleleに変異(exon8の点突然変異)を認めた症例については,白血球についても解析を行い,germlineでもWT1の両方のalleleの異常が認められた。このことから,従来の仮説と異なり,Wilms腫瘍発症にはWT1遺伝子の両方のalleleの異常だけでは十分でないことが示され,報告した(FEBS letter 1995)。またintron9の4番目の塩基に突然変異を示していた3例については,変異部分をvectorに組み込んだWT1 minigeneを作成し発現させる解析を行い,この変異によってsplicing patternが変化することを確認した。 2)弧発生Wilms腫瘍におけるWT1遺伝子変異の解析:従来の症例と合わせ,計50例について解析を行い,本年度は新たに1例の微小変異症例を見出した,これは,現在まで報告のないexon10の43bpの重複であり,この腫瘍から,scid mouseへの継代移植,細胞株の樹立を行うことができた。これまで,Wilms腫瘍の細胞株は樹立が困難で,特にWT1遺伝子の変異を伴うものは,確立されていなかったが,今後これらの細胞を用い,正常WT1遺伝子導入による増殖の変化などをさぐることで,WT1遺伝子の腫瘍発生における機能を解析する系となるものと思われる。 3)正常および変異WT1遺伝子産物機能解析:現在,正常白血球・脾あるいはWilms腫瘍よりRNAを抽出し,RT-PCRによってWT1の全領域のcDNAを作成中である。
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