研究概要 |
本研究は軟部腫瘍の本態,生物学的特性および細胞遺伝学的特徴を解明し,診断の精度向上に役立つ基礎的なデータを得ることを目的として,種々の腫瘍の病理組織学的検索,細胞培養,染色体分析および分子生物学的分析を行い,次の成績を得た。 (1)皮膚線維腫dermatofibromは表在性線維性組織球腫ともよばれ,本態に異論の多い腫瘍状病変であるが,45例についえ種々の細胞マーカー(PCNA,HAM56,CD68,vimentinなど)を用いて免疫組織化学的分析を行った。そして増殖細胞の主体が線維芽細胞(PCNA+,HAM56-,CD68-,vimentin+)であり,間質に出現する組織球は腫瘍細胞ではなく反応性細胞(PCNA-,HAM56+,CD68+)であることを証明した。 (2)類上皮肉腫の染色体分析およびchromosome painting(fluorescence in situ hybridiza-tion ; FISH)を施行し,新たな染色体異常der(22)t(18 ; 22)(q11 ; p11.2)を発見した。 (3)未分化な小円形細胞腫瘍であるprimitive neuroectodermal tumor(PNET)およびEwing肉腫について細胞培養および染色体分析を行った。特に腎原発のPNETについては初めてchromosome paintingとRT-PCRを行い,特異的な転座t(11 ; 22)(q24 ; p12)を確認した。 (4)最近一部の低悪性度軟部腫瘍で余剰環状染色体supernumerary ring chromosomeが出現することが注目されているが,私どもは103例の軟部組織腫瘍の染色体分析を行い,高分化脂肪肉腫,筋肉内異型脂肪腫および隆起性皮膚線維肉腫に余剰環状染色体を検出し,この染色体異常が低悪性度ないし良悪性の境界病変に特徴的であることを証明した。 (5)このほか腱鞘巨細胞腫および滑膜肉腫についても,免疫組織化学的および細胞遺伝学的分析を行った。
|