研究概要 |
マウスを用いたヒト大腸癌RPMI4788細胞の肺転移の実験系に関するこれまでの研究により、In vivoでマイコプラズマ由来のAg243-5分子が肺への癌転移促進作用を示すことが明らかにされた。本研究ではこの分子機構を明らかにするため、In vitroの実験系においてAg243-5が細胞にいかなる影響を及ぼすのかについて検討を進めた。 サイトカインの産生に及ぼす影響を検討するために、Ag243-5投与後のマウスの脾臓および肺について,IFN-α,IFN-β,IFN-γ,TNF-α,TNF-β,IL-1α,IL-1β,IL-2,IL-3,IL-4,IL-5,IL-6,IL-7,IL-9,IL-10,G-CSF,M-CFS,GM-CSF,LIF,TGF-βの遺伝子発現に及ぼす影響をRT-PCR法で検討した。その結果、いずれの遺伝子発現においてもヒト大腸癌RPMI4788細胞の肺転移との関連性は認められなかった。このため、当初予定していたAg243-5遺伝子のトリプトファンをコードするTGA(通常はストップコドンとして読まれる)をTGGに改変し、E.ColiでAg243-5遺伝子を発現させ、リコンビナントAg243-5を調整する計画は延期された。接着分子の発現に対する影響を検討する必要があると考えられる。 ヒト末梢血リンパ球のcDNAについて、Ag243-5のホモログの有無を調べるため、Ag243-5遺伝子断片を作成し,Southern blot解析、およびAg243-5遺伝子の合成プライマーを用いたRT-PCRを行ったが、ヒトでのホモログは見いだされなかった。既知のタンパク分子データーバンクを用いたアミノ酸配列のホモロジー検索からも、何らかの機能を推測させるモチーフは得られていない。 今後、本研究を推進するためには、Ag243-5の生理活性を追跡しうるIn vitroの実験システムの確立が必須であると考えられる。
|