研究概要 |
自己免疫疾患は、正常では起こらない自己成分に対する免疫反応が惹起され、自己の組織が障害される病態である。我々は、MRL/lprマウスの免疫異常、特に[MRL/lpr->MRL/+]キメラマウスにみられるgraft-versus-host disease(lpr-GVHD)について研究してきたが、その過程で2種の血球に対する自己抗体ハイブリドーマを樹立した。一つはT細胞特異的抗体(25T3:IgM,k)で、末梢CD8^+T細胞の70-80%とCD4^+T細胞の約30%が陽性であり、CD4^+細胞を2つの亜系に分別した。25T3^+CD4^+T細胞は25T3^-CD4^+T細胞に比較して、IL-2を多く産生したが、IL-4はむしろ少なく、25T3抗体はTh1とTh2細胞を分別する可能性が示唆された。その反応抗原は約70kDaであった。他の一つはF6C7(IgG2b,k)で、自己MLR反応で芽球化したT細胞に強く反応し、MRL/lprマウスにはF6C7抗体で強陽性に染まるT細胞が観察された。F6C7抗体の反応する抗原は約78と70kDaから成るheterodimerであった。これら単クローン性抗体の反応抗原のcloningは完遂されていないが、これらの抗体は今後、免疫異常症に於けるT細胞の解析に有用と考えられる。さらに糸球体腎炎を自然発症するモデルマウスであるFGSないし(NZW X BXSB)F1マウスから自己抗体ハイブリドーマを樹立する過程で、腎炎原性を有する抗体が得られた。SCIDマウスにこれらハイブリドーマ細胞を移植すると蛋白尿が観察された。FG1H5抗体(IgM,k)はssDNAのみならず腎糸球体(主にメサンジウム)に直接反応し、腎に沈着した。その反応抗原は約28kDaであった。W/B4A9抗体(IgM,k)は糸球体のみならず、尿細管周囲さらに心などほぼ全身の毛細血管壁に沈着した。この抗体はplasma中の約25kDaの蛋白と反応した。W/B2A4抗体(IgG3,k)はcryoglobulinであり、主に糸球体の毛細血管壁に沈着し、高度の蛋白尿を誘発した。その反応抗原は現在不明である。自己免疫性腎炎の発症に関連したハイブリドーマの樹立は、反応抗原の特定を含め、腎炎発症機序の解明に有用と考えられる。
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