研究概要 |
18種類のSTMS(Sequence Tagged Microsatellite Site)プライマーセットを用いたPCR法により,住血吸虫遺伝子中に存在するマウスの非反復配列を検索した.その結果,検出されたマウスの主要組織適合遺伝子複合体(H-2)領域を含む配列は,増幅産物の出現様式の違いに基づき,1)マンソン住血吸虫と日本住血吸虫のいずれのDNAにも検出されないもの[D4LCK,D15TJ-2.17,D17MIT7(L4),D17MIT7(A23)],2)日本住血吸虫DNAには検出されるが,マンソン住血吸虫DNAには検出されないもの[D12MMODCC,D17MIT2,D17MIT3,D17MIT6,D17MIT10,D17MIT13,D17MIT19,D17MIT24],3)両種住血吸虫DNAに検出されるもの[D13GT78,D17MIT4,D17MIT5,D17MIT9,D17MIT23,D17Nds2]という,3グループに大別された.さらにマウスの第17染色体に存在するH-2遺伝子領域をnested PCR法により詳細に検索したところ,N-terminalドメインはマンソン住血吸虫のミラシジウム・雄成虫及び日本住血吸虫の雌雄成虫DNA中に検出されたが,C_2 ドメインは日本住血吸虫雌雄成虫DNAにのみ認められた.マウスのβ_<2->ミクログロブリンを含むクラスIとクラスIIのH-2遺伝子領域が日本住血吸虫DNAには広く存在していた.それに対して,マンソン住血吸虫DNAにはβ_<2->ミクログロブリンとクラスI抗原のH鎖のアロ抗原の認識に重要なα_1とα_2ドメインの遺伝子領域の存在が認められ,クラスII抗原のα鎖とβ鎖では膜結合部位側のα_2とβ_2の各ドメインの遺伝子領域が検出された.このようにH-2遺伝子領域が住血吸虫類ゲノム中に不均一に存在する事実は,住血吸虫類の宿主防御免疫からの回避機構を解明するうえで重要な手がかりを与えるものと思われる.
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