研究概要 |
1.イギリスの自然史博物館寄生虫学部門を1994年7月訪問し、部長D.I.Gibson博士と共に博物館所蔵の裂頭条虫類について組織学的検討を行った。観察した虫類は、D.antarcticum,D.archeri,D.arctocephalium,D.bresslani,D.coatsi,D.cordatum,D.dendriticum,D.ditremum,D.elegans,D.erinacei,D.felis,D.glaciale,D.hians,D.lanceolatum,D.lashley,D.latum,D.mobile,D.pacificum,D.pavum,D.perfoliatum,D.ployrugarum,D.quadratum,D.ranarum,D.reptans,D.rufum,D.salivelisni,D.scoticum,D.scotti,D.stemmacephalum,D.theileri,D.trinitalis,D.wilsoni,D.tetrapterusであった。膨大な資料・標本が所蔵されており、限られた訪問時間のため封入標本、切片標本の観察に終ったため、1995年8月に再度訪問し共同研究を続行する予定である。 日本医学中央雑誌を中心に、1982年から1994年6月までの裂頭条虫類人体寄生例の記述的疫学的調査を行った。その結果、D.latum(殆どD.nihonkaienseと考えられる)1514例、D.nihonkaiense、43例、D.yonagoense17例、D.pacificum6例、D.cameroni1例、D.hians1例、D.scoticum1例、D.orcini1例、D.grandis181例、D.fukuokaensis1例、S.erinacei(Adult)11例が報告されている。現在、Taenia、Echinococcusの症例を集約中である。 3.海産性裂頭条虫類の人体寄生増加傾向に鑑み、日本の水族館に対して海産哺乳類の寄生条虫について、アンケート郵送法により調査を行った。その結果63館の調査対象の内、47館から回答を得た。その内、該当例が12館あり、6館から虫体10例が送付された。また、裂頭条虫寄生宿主は11種に上り、オキゴンドウ、バンドウイルカ、オタリア、シャチ、カマイルカ、ゴマフアザラシ、アフリカオットセイ、ユメゴンドウ、キタオットセイ、コビレゴンドウ、ハナゴンドウなどであった。現在、これらから得られた虫体の同定を進めている。 4.海産性裂頭条虫類の人体寄生報告が多い沖縄県を対象に、医師会会員に対するアンケート調査を行った。その結果、959人の内、408人から回答を得た。その内7人から症例ありの回答を得、30例の寄生を認めた。内訳は、D.latum,D.nihonkaiense,D.yonagoense,D.pacificumで、他にTaeniaが2例であった。今後、継続して長崎県などの調査を予定中である。
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