研究概要 |
寄生虫感染防御反応におけるインターロイキンの役割がさまざまな寄生虫感染実験モデルにおいて明らかにされつつある.特にIL-3は肥満細胞の分化・増殖に関与しており,腸管寄生線虫の排虫機序との関連で検討されている.本研究において,私達はrIL-3で前処置したマウスにおいて旋毛虫成虫の排除が促進されることを見出した. 6週令雄性C3H/Heマウス腹腔に感染前5日間,毎日2×10_3UのIL-3を投与し,旋毛虫感染幼虫400隻を経口投与した.感染一ヵ月後,筋肉幼虫数を調べたところ,rIL-3投与群では対照群に比べ有意に幼虫数が低下していた.次に腸管からの排虫が完了している16-20日目にrIL-3を投与しても筋肉幼虫数に変化は認められなかった.これはrIL-3の防御効果は腸管ステージで発現することを示している.そこで経時的に小腸内の虫体数を調べたところ,すでに感染5日目でrIL-3投与群で虫体数は有意に低く,小腸粘膜肥満細胞数も対照群に比べ7倍に増加していた.次にrIL-3の全投与量10^3,3.5×10^3,10^4Uの三群と対照群の感染5日目の小腸粘膜肥満細胞数を比べたところ,それぞれ3倍,2.4倍,6.5倍に増加していた.小腸の成虫数はrIL-3投与群で低下傾向はあったが,10^4U投与群のみ有意の差が認められた.rIL-3で誘導された防御反応にrIL-4,rIL-5が関与するか否かを調べるためにrIL-3で処理したマウスに抗rIL-4(1mg/匹),抗rIL-5(2mg/匹)モノクロナール抗体を注射した.その結果両抗体とも本実験条件下では防御効果を抑制できなかった.以上の結果からrIL-3によって誘導された粘膜肥満細胞が旋毛虫成虫の排除に関与していることを示唆しておりこれまでに肥満細胞欠損マウスを用いた実験などから得られた仮説を強く支持するものである.
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