研究概要 |
平成6,7年度に線虫Nippostrongylus brasiliensis感染ラットを用いて実施した本研究の概要および結果は以下のとうりである. 1.線虫感染により,IgE抗体の主要産生部位である腸間膜リンパ節(MLN)におけるCD4^+細胞の増加およびCD8^+細胞の減少を認めた.感染前後を通じてIgE反応性の低いFischer(F)-344ラットではIgE反応性の高いBrown norway(BN)ラットよりCD8^+細胞の割合が高かった. 2.感染前F-344ラットでBNより高いIFN-γの産生が認められた.また,感染に伴いMLN細胞によるIFN-γ産生は抑制された.これらMLN細胞によるIFN-γ産生の違い,変化は相対的なCD8^+T細胞数と一致していた.さらに,IFN-γ産生はラットにおいてもCD8^+T細胞が中心となっていることを確認した. 3.MLNにおけるIL-3,IL-4,IL-5mRNAの発現は感染により両系統で顕著に増加し,ラットにおいてもTh2細胞が誘導されることを示した.BNラットでは感染前後を通じてF-344ラットより高いIL-3,IL-4,IL-5の発現が認められた.しかし,IL-2,IL-10およびIFN-γの発現に一定の変化は認められなかった. 4.特異的IgE抗体の標的である成虫由来の分泌排出抗原および単離精製したシステインプロテアーゼは,Con A刺激によるMLN細胞のIFN-γ産生を濃度依存的に抑制した.さらに,この抑制は細胞毒性によるものではないことが確認された. これら結果は,線虫感染におけるIgE抗体産生にはラットにおいてもT細胞集団のタイプ2細胞への機能的変化を伴うことを明らかとし,線虫由来の刺激物質が直接T細胞に作用している可能性を示している.
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