研究概要 |
Cryptosporidium murisを免疫不全マウスおよびラットに感染させ,宿主の免疫応答による虫体排除機構の解析を行ない,下記の結果を得た. 1.ヌードマウス(BALB/c nu/nu)では感染は長期間持続し,感染局所ではL3T4,Ly-2ともに陰性と考えられるThy-1.2陽性細胞の軽度の浸潤を認めるのみで,間接蛍光抗体法による抗C.muris抗体価も一部のマウスが1:4-1:16陽性を示すにとどまった. 2.非感染BALB/cマウスの腸間膜リンパ節細胞1×10^7個を移入したヌードマウスでは,感染80日以降にオーシストの排泄は陰転し,その際の胃粘膜にはThy-1.2,L3T4,Ly-2各陽性細胞の多数の浸潤を認めた.抗体価はほとんどのマウスで1:64-1:256陽性を示した. 3.ラットにおける免疫反応もマウスの場合とほぼ同様であった. 4.C.murisのスポロゾイトを抗C.murisウサギ血清を用いてin vitroで処理すると,スポロゾイトは死滅したり,凝集するものが出現し,感染能が著しく低下することが明らかになった. これらの結果から,C.muris感染における虫体の排除には感染局所のT細胞系の動態が密接に関与し,宿主の細胞性免疫機能が本症の治癒に重要な役割を果たしていることが示された.また,液性免疫もある程度は虫体排除に関与していることも示唆された.
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