研究概要 |
著者らはウサギおよびヒト顆粒球より内毒素(LPS)と結合し,その活性を中和する分子量18kDaの抗菌性塩基性蛋白(Cationic antibacterial protein ; CAP18)を見いだし,それらの全一次構造およびそのC末端32残基からなるペプチド部分が活性ドメインであることなどを明らかにしてきた。ここではヒトCAP18を中心にその遺伝子構造および活性ドメインについてさらに詳細に検討した。 【結果】;ポリミキシンB(PxB)耐性 Klebsiella pneumonieへの影響;(1)PxBは高濃度でも耐性菌には抗菌活性を示さなかったが,ヒトのペプチドは抗菌活性を示した。(2)PxBの抗菌活性は,S-LPS,Re-LPS, lipidAおよびPxB感受性菌由来のLPSとのincubationで抑制され耐性菌由来のLPSでは抑制されなかったが,ヒトのペプチドの抗菌活性はすべてのLPSで抑制された。CAP18の遺伝子構造;ヒトCAP18をコードしている遺伝子は第3番目の染色体上にあった。この蛋白は4つのエクソンからなっており,エクソン1はシグナルペプチドとN末端側37残基をコードしており,エクソン4はLPS結合ドメインを含む43残基をコードしていた。活性ドメインの解析;前述の32残基をもとにさらに20-34残基からなるペプチドを合成し種々の活性を比較した。(1)C末端をtruncateしていくとLPS結合活性が低下したが,N末端側はそれほど影響されなかった。(2)LPS結合活性と並行してリムルス抑制活性がみられ,30残基ペプチドの活性が最も高く,ついで27,24残基のペプチドであった。(3)E.coli, S. aureusに対する抗菌活性は30,27残基ペプチドが特に高く,22残基ペプチドも活性を示した。 【考察】CAP18のFunctional domainは27残基からなるペプチドであることが判明した。PxBと比較してペプチドとLPSや細菌との結合のアフィニテイーは高いが特異性は低いものと思われる。また,LPS活性の抑制はBPI(bactericidal permeability increasing protein)に匹敵するものと考えられる。
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