研究概要 |
β-ラクタム薬の標的はPBPであり,PBPを阻害すると細菌の形態は変り,最終的に溶菌する。これは,細菌のPBP阻害と形態変化が密接に関わっている事を示すものであり,PBP2阻害はプロトプラスト化,PBP3阻害はフィラメント化させる。我々はこの形態変化と溶菌に伴なうエンドトキシン遊離に着目した。その結果,大腸菌,緑膿菌にβ-ラクタムα薬を作用させると,PBP3阻害薬はPBP2阻害薬に比べエンドトキシンを多害に遊離さえることが判明した。さらに,緑膿菌のPBPに対して,カルバパネム薬は種類により結合親和性が異なる物がある事に着目し検討した。その結果PBP2阻害薬はPBP3阻害薬に比べ4倍強のエンドトキシンを遊離させた。 次にE.cloacaeからPBP変異株を分離し、溶菌に伴なうエンドトキシン量を比較した所,この場合もPBP2変異株の方がPBP3変異株に比べエンドトキシン量は多かった。 以上の結果は,臨床でのβ-ラクタム薬を使用するに際し,エンドトキシン遊離とそれに伴なう副作用についても十分検討する必要性を示す。 一方,これらの研究の過程で,緑膿菌に対して,キノロン至薬やβ-ラクタα至薬が菌をムコクド化させることを見出した。そこで,抗菌薬の作用に伴なうバイオフィルム形成をアルギン酸の定量により検討した。その結果,キノロン薬,PBP3親和性を示すβ-ラクタム薬処理菌はアルギン酸を著しく増加させたが,エリスロアイシン,フオスミシンは対照と同程度のアルギン酸形成にとゞまった。この結果は,抗菌薬の2次作用としてアルギン酸を増やしバイオフイルム形成を促進するという初めての報告である。
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