研究概要 |
1.MRSAにおけるキノロン耐性機構 (1)MRSAを含むS.aureusよりクマリン系抗生物質の耐性変異株を分離し,これらの変異株を感受性測定によりcoumermycin A(CMRM)に感受性を示し,novobiocin(NB)に低度な耐性を示すグループ1(3株)とCMRM,NBの双方に耐性を示すグループ2(18株),さらにCMRMに耐性を示しNBに感受性を示すグループ3(1株)に分類した. (2)これらの変異株のgyrB遺伝子の塩基配列を直接塩基配列決定法で検討したところ,すべての変異はArg-144(AGA)で見られ,AGA→AAA(Lys),AGA→AGC(Ser),AGA→AGT(Ser),AGA→ACA(Thr),AGA→ATA(Ile)の5種類の変異を認めた.また,グループ1ではすべてLysへの変異であり,グループ2ではSer,Thr,Ileへの変異が見られ,グループ3の1株では変異が認められなかった. 2.MRSEにおけるキノロン耐性機構 (1)キノロン耐性のMRSEを含む77株について,一本鎖DNA高次構造多形法により検討したところAよりIまでの9パターンが確認された. (2)直接塩基配列決定法によりこれらの株のgyrAの変異部位はA:標準株と同配列;B:Ser-84→Tyr;C:Ser-84→Phe;D:Pro-63→Pro;E:Ser-84→Ile;F:Gly-82,Ser-84→Cys,Phe;G:Glu-88→Lys;H:Ser-84,Glu-88→Phe,Lys;I:Ser-84,Glu-88→Phe,Valであることを示した.また感受性および酵素学的検討により,AおよびDパターンの菌株はキノロン耐性決定領域に変異を起こしていないため感受性,B,C,E,Gパターンの株性は一点変異を起こしているために中程度から高度の耐性,そしてF,H,Iパターンの菌株は二重点変異をおこしているために高度耐性であることを示した.
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