研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)のエンベロープ蛋白質の一部に存在する超可変領域(HVR1)がウイルスの中和エピトープとして機能することを実証するために、その解析手段としてHCVの感染培養細胞系の樹立を試みた。 20例のC型肝炎患者及びHCV陽性の献血者血清中におけるHCV量をウイルス遺伝子の5'非翻訳領域をPCR法により増幅することにより測定し、もっとも高値(>10^6コピー/ml)を示した試料1090を選択した。この血清試料1090を種々のヒト培養細胞に種々の条件下(温度、細胞密度、吸着時間)添加し、以後、経時的に培養上清と細胞を集め、PCR法によりHCVのプラス鎖及びマイナス鎖RNAを検出し、HCVの感染が成立しているか否かを検討した。肝癌由来のHuH7,HLE,HLF,PLC/PRF/5,Li21,Li22,Li23,Li24細胞、胆管癌由来のHuCCT1,HuH28細胞、慢性肝炎由来でSV40largeT抗原で不死化したPH5T細胞、単核球白血病由来のU937,THP-1細胞、成人T細胞白血病ウイルス感染細胞であるC91/PL,OCH,MT-2細胞、また、ヒト以外でHCVの感染が期待されるブタ腎臓由来のPK15細胞について検討した結果、ほとんどの細胞株においては血清添加後一週間以内に細胞及び培養上清にHCV遺伝子が検出されなくなった。この結果は、これらの細胞がHCVに対して非感受性であるか或いは感染してもその効率が非常に低いものと考えられた。しかし、成人T細胞白血病ウイルス感染細胞であるMT-2細胞は血清添加後15日間においても細胞内にプラス鎖HCV-RNAが検出されたことよりMT-2細胞はHCV感染に感受性を有するものと考えられた。また、マイナス鎖RNAも血清添加後10日目に検出されたことによりMT-2細胞内でHCVの複製が起こっているものと考えられた。さらに、血清添加後10日目に得られたMCVのHVR1のアミノ酸配列は原血清が不均一であったのと対照的に均一になっていたことからMT-2細胞内でウイルス遺伝子の複製が起こっているものと考えられた。従って、本研究により見い出したMT-2細胞を用いることにより抗HVR1抗体が実際にHCVの中和抗体として働くか否かを検討することが可能となった。
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