研究概要 |
IL-6によってよく活性化されるjunB遺伝子や肝での急性期蛋白遺伝子群の転写活性化を指標にIL-6シグナル伝達路を明らかにしてきている。junBプロモーター上のIL-6応答領域(JRE-IL6)は、チロシンキナーゼの下流にあるがRas,Raf非依存性で阻害剤H7に感受性のある伝達路により活性化される。JRE-IL6のうちETS結合部位(JEBS)や急性期蛋白遺伝子群プロモーターのAPREに、IL-6刺激後1分以内に結合してくる蛋白を次の二つの方法により同定した。第一にIL-6刺激したラット肝核蛋白より、DNAアフィニティーカラムにより直接APRE結合蛋白(APRF)を精製した。この精製蛋白はチロシンリン酸化を受けており、主要なものはSDS-PAGE上で89kDa蛋白であった。実際精製APRFは、JEBSに重なる部位に特異的に結合した。第二に、p91やp113(それぞれStat1,Stat2と呼ばれている)に良く保存された領域をもとに、変性プライマーを作製し、RT-PCR法により新規STAT転写因子の部分cDNA(後にStat3/APRFと同一であると判明)を得た。cDNAから推測したアミノ酸配列をもとにペプチドを合成し特異抗体を得た。この抗Stat3抗体が精製DNA結合蛋白のうち主要な89kDa蛋白と強く反応することから、89kDa蛋白はStat3もしくはStat3に非常に類似したものと考えられた(BBRCに発表)。精製蛋白の部分アミノ酸配列を決定したところ、ラット89kDa蛋白はZongらや審良らの報告したStat3/APRFと同一であると判明した。最近、JRE-IL6には、APRFより移動度の遅い複合体(JRE-IL-6BC)が形成されることを明らかにしており、Stat3が未知のDNA結合蛋白と複合体を形成し協調的にJRE-IL6に結合すると考えられる。またアデノウイルスE1Aが、IL-6シグナル伝達路をブロックすること、この阻害メカニズムの一つとして、アデノウイルスE1A(12S)がStat1,Stat3を含むStat蛋白発現量を低下させることを見いだした(J.lmmunology)。
|