研究概要 |
本研究では胎仔肢芽培養法を用いて混合物の胎仔毒性を検索し、用量一反応曲線から相互作用を解析し、胎仔肢芽培養法の混合物の胎仔毒性リスク評価法としての有用性を明らかにすることを目的とした。相互作用のよく知られた水銀とセレンをモデル物質として、相互作用の解析の方法の検討を行い、isobole diagramによる方法が、簡便で視覚的にもわかりやすく、相互作用の解析方法として適当だと診断された。胎仔肢芽培養法では、細胞増殖への影響、細胞分化への影響のそれぞれへ相互作用の他に、胎仔毒性のポテンシャルの指標となる、それらの比(P/D比)に対する相互作用の情報も得られ、胎仔毒性の評価に有用と考えられた。環境汚染化学物質としては、環境中のサンプルから高頻度で検出される9種類の有機塩素化合物を対象とした。それらは、p-ジクロロベンゼン(pDCB)、o-ジクロロベンゼン(oDCB)、p-クロロアニリン(pCA)、3,4-ジクロロアニリン(DCA)、リン酸トリス(2-クロロエチル)(TCEP)、2,5-ジクロロフェノール(DP)、2,5-ジクロロアニソール(DA)、Triclosan(IR)、Triclocarban(TC)である。それぞれの単独の胎仔毒性を胎仔肢芽培養法を用いてスクリーニングした結果、毒性の強かったpCA、IR、TC、P/D比の高かったTCEP、DPと、細胞増殖作用の知られているpDCBの中から2つの化合物から成る混合物6種類をつくり、胎仔肢芽培養法で得られた結果をisobolediagramで解析した。IR-TCの組み合わせでは混合物の作用は相加的であった。これに対し、pDCB-TCEP、pDCB-pCAでは、細胞増殖に対してより毒性軽減作用がみられ、pDCB-DPでは、細胞分化に対してより毒性軽減作用が認められた。混合物の混合比によってP/Dが変わり、胎仔毒性のポテンシャルが変わる可能性が示唆された。胎仔肢芽培養法は、混合物の胎仔毒性リスク評価に有用な情報を提供すると考えられた。
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