研究概要 |
本研究の目的は、(1)ライフスタイルや運動機能、高次脳機能などの加齢変化の把握 (2)脳機能の異常を早期段階でスクリーニングする簡便法としての指標を検討することである。対象者は本研究目的に同意を得た者で日常生活に支障ない60歳以上の在宅高齢者で男性が71名(73.0±6.5歳)、女性が231名(70.1±6.0歳)である。調査項目は問診(ライフスタイルなど)52項目、身体特性5項目、運動機能5項目、PGCモラールスケール、Zung鬱スケール、高次脳機能検査5項目(MMS,三宅式記銘力PAL,仮名ひろい,Raven,Rey複雑図形)である。対象者のMMS得点平均値は男性が26.1±3.5、女性が26.9で±2.5で、臨床的には痴呆症状のない者である。対象者のうち111名(男性35、女性76)は脳MRI検査も実施した。加齢とともに、熟睡ができず(男)、睡眠時間が長くなる(女)、咀嚼困難、飲酒量低下(男)、陽気(男)小心(女)、新聞を読むのが面倒になる、肥満指数BMIが低くなる(女)、拡張機血圧低下(女)、握力低下、大腿四頭筋筋力低下、動作が遅くなる、平衡能低下、高次脳機能検査得点の低下、鬱傾向(女性)となる傾向にあった。脳MRI検査成績は、梗塞性所見は、65-69歳では男性が71.4%で女性が66.7%であったが、70歳以上では、男女ともに90%以上の者に所見を認めた。脳萎縮所見を有した者は男性では65-69歳の28.6%から75-79歳の45.5%へと加齢とともに増加傾向にあったが、女性では65-69歳で26.7%、75-79歳で26.3%と加齢による増加は認められなかった。MRI検査で梗塞性所見または脳萎縮性所見(臨床的に問題とならない程度のものも含む)が認められた者の特徴(年齢補正)は、睡眠時間が長い、MMS得点が低い(男)、三宅式記名検査得点が低い(男)、仮名拾いテスト拾い忘れが多い(女)、Raven得点が低い、Rey得点が低い(男)、動作が遅い(男)、平衡保持時間が短い(女)などであった。今後、対象者を追跡し本成績と記銘力体または痴呆症との関連を把握する予定である。
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