研究概要 |
(目的)本研究は残留性・使用頻度・毒性などを目安に80種の農薬を選び、それらの高感度かつ精度の高い一斉分析法を開発し食品経由による農薬暴露量を算出し、その量が健康に影響を及ぼすかを解析することを目的とした。 (方法)国民栄養調査に基づき摂取の多い約120種の食品を調理後,系統的に13群に分類・混合し各群ごとに分析を行なった。各食品群はアセトン・ジクロロメタンによる抽出後,GPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)により夾雑物の大部分を排除しさらにフロリジルカラムにより精製した。農薬の測定にはネガティブCI(NCI)モードGC/MS,EIモード,GC/FPD,GC/MS,GC/ECDを用いた。 (結果)精製にGPCを導入することによりトリグリセリドや色素の大部分同時に除去できまた分析時間もかなり短縮された。食品中残留農薬を一斉分析する場合、EIモードGC/MSでは妨害成分のために農薬だけを選択的に検出することは困難であったが、NCIモードではマイナスイオンを測定するために食品由来の妨害が大幅に減少した。特にEIモードでは困難なm/z100以下のイオンにおいても高い選択性を示した。NCIモードGC/MSにおける塩素系の検出感度はGC/ECDと同程度であり、ピレスロイド農薬はpgレベルでの測定が可能であった。またリン系農薬もpgレベルでの測定が可能であったが含窒素農薬はマイナスイオンを生じにくくNCIモードでの測定はできなかった。 検出された農薬は17種で、一日当たりの摂取値が多かった順からXMC(2.3mg),キシリルカルブ(1.0mg),ペルメトリン(0.6mg),クロルピリホスメチル(0.5mg),ジコホール(0.4mg),シペルメトリン(0.4mg),ダイアジノン(0.3mg)などであった。これらの摂取値はそれぞれのADIに比べ1%以下の極めて低い値であった。
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