研究概要 |
好中球およびマクロファージ中に見出されているロイコトキシン(LTX)は従来酸素的に生合成されるものと考えられていた。しかし、好中球、ヒト急性単球性白血病細胞株THP-1をフォルボールエステルでマクロファージに分化させた細胞中のミクロソームを酵素源としてLTXの産生を試みたが、全く生合成されなかった。一方、in vitroでxanthine oxidase(XOD)-SOD-cytochrome C系ではリノール酸からLTXが産生されることから、細胞内ではNADPH oxidase等で生成されるスーパーオキサイドから非酵素的にLTXが産生されるものと考えられる。また、XOD-SOD-myeloperoxidase系ではリノール酸から、クロロヒドリンが産生されることが明らかになり、この物質の生理活性に興味がもたれる。 THP-1由来マクロファージを高酸素下で培養後、抗LTX、抗PDGF、抗TGF-β各抗体を用い、免疫組織化学的手法により、細胞内の変化を検討した。その結果、高酸素下で培養した細胞は対照(空気)の培養細胞に対して、著しいLTX,PDGF,TGF-βの産生が認められたことから、LTXが直接、間接的にPDGF,TGF-βの産生に関与し、肺組織における線維化に寄与している可能性を示唆するものである。 THP-1由来マクロファージを高酸素下で培養し、これを抗10-hydroxy-12-oct-adecenoic acid(10-OHODA)モノクロナール抗体で免疫組織化学的に染色した結果、10-OHODAの産生はほとんど認められなかった。しかし、この高酸素下培養細胞から脂肪酸成分を抽出後、抗10-OHODA抗体を用いてELISAを行ったところ、わずかの10-OHODAが検出された。一方、モルモットの摘出乳頭筋を用い、LTX,10-OHODAによる乳頭筋に対する変化を検討したところ、いずれも乳頭筋を拡張される作用を示したが、その作用は前者より後者の方が著しく、しかもその作用は濃度依存性であることが明らかになった。
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