研究概要 |
法医解剖における内因性急死のトップである急性心臓死のうち、虚血性心疾患は解剖時肉眼所見に乏しい。そこで従来検査室で生体血液について行われている血液生化学検査を虚血性心疾患の診断の補助をするため、死体血液について総タンパク,アルブミン,TTT,ZTT,コレステロール,総ビリルビン,カルシウム,鉄,尿素窒素,クレアチニン,尿酸,アミラーゼ,アルカリフォスファターゼ,ロイシンアミノペプチダーゼ,γ-GTP,コリンエステラーゼ,中性脂肪の17項目の検査を行い、生体血液の正常値に相当する死体血液の正常域を統計学的に設定した。またこれらのうち心疾患のマーカーであるコレステロールと中性脂肪及びCPK,LDH,GOTについてはアイソザイムについても合わせて検討を行った。CPK,LDH,GOTの値は死体血液においては死後急激に上昇するため、心疾患のマーカーとしては利用できないが、LDHのアイソザイムについては死体血液特有のパターンを示すものの、心筋の病変を比較的よく反映していた。総コレステロール,中性脂肪は食事の影響(胃内容の状態)を考慮に入れれば、いずれも死後の値変動が比較的少ないため、心疾患のマーカーとして使用可能であると考えられた。また両者の値は心重量,冠状動脈の硬化・狭窄の程度、さらに心筋病変の有無と相関性が決められた。従ってLDHのアイソザイム,総コレステロール,中性脂肪の値が虚血性心疾患のマーカーとして有用であると考えられ、さらにHDL,LDL,VLDV,カイロミクロン,リポタンパクの有用性が示唆された。
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