研究概要 |
全身性エリテマトーデス(SLE)におけるアポトーシス誘導抗原Fasの発現異常に関して以下の新知見を得た。 1.SLE患者末梢血T細胞では,健常人や慢性関節リウマチ患者とは異なり,ナイーブT細胞においてFasが陽性であった。しかも,CD25やCD71などの早期〜中期活性化抗原も同時に発現していたことから,活性化T細胞の回転亢進と共に活性化細胞抑制機構の機能不全が考えられた。 2.SLEのT細胞におけるFas発現増強の臨床的意義を解析すると,CD4陽性T細胞サブセットの血中循環細胞数とFas密度に有意の逆相関が認められた。すなわち,Fas密度の増強がCD4陽性T細胞のアポトーシス感受性を亢進させていると考えられた。 3.SLEの末梢血単核細胞より膜型Fas(mFas)遺伝子とは異なる可溶型Fas(sFas)遺伝子をクローニングした。その発現機序は,膜貫通部エクソン6の選択的スプライシングによるものであった。 4.半定量的RT-PCR法を開発して,SLEにおけるsFasおよびmFas遺伝子の発現を解析すると,健常人では両者の発現がほぼ一定の割合であるのに対して,SLEでは両者の発現に有意の相関がなく,Fas遺伝子の発現調節機構の変調が明らかとなった。 5.sFasを検出するサンドイッチELISA法を開発して,各種自己免疫疾患の血中sFasレベルを測定した。SLEのみが健常人や他の自己免疫疾患より有意に高いレベルを示した。しかも,活動期SLEのsFasレベルは非活動期より増加し,sFas陽性率も高かった。 6.sFasに相当する遺伝子をラットにおいても同定できたことから,sFasは哺乳動物に共通した機能的分子と考えられた。実際に,sFasはFasリガンドによるアポトーシスを抑制することから,sFasが活性化誘導型細胞死を制御する因子の一つであると考えられた。
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