研究概要 |
レジオネラ菌は細胞内寄生細菌で、単球やマクロファージ内で増殖することが知られている。ヒトではレジオネラ肺炎をおこし、特にcompromised hostへの感染が注目されている。本研究では、まず細胞株を用いた実験モデルの作製を行い、次にcompromised hostとして、HTLV-I(human T-lymphotropic virus type I)が原因ウイルスである血液悪性腫瘍ATL(adult T-cell leukemia/lymphoma,ATL)及びHTLV-Iキャリアを対象としてレジオネラ感染実験をin vitroで行い、サイトカインの関与についても検討した。 1.細胞株を用いたレジオネラ感染実験モデルの作製(j.Leukoc.Biol.57,574-580,1995,j,Interferon & Cytokine Res.16,347-356,1996)--ヒト白血病細胞株HL-60細胞を1,25-dihydroxyvitamin D_3及びその誘導体である22-oxacalcitriol(OCT)で分化誘導した後にレジオネラ菌を加え、感染と細胞内菌増殖が成立することを見いだした。分化誘導した細胞にγ-インターフェロン(IFN-γ)を作用させると細胞内レジオネラ菌増殖が著明に抑制された。 2.Compromised hostとしてのATL患者とHTLV-Iキャリア及びサイトカイン産生(Acta Haematol.93,25-30,1995,Int.J.Hematol.64,111-118,1996)--ATL患者の剖検例ではカリニ肺炎とサイトメガロウイルス感染症が死因として重要であり、この疾患の免疫不全が示唆された。一方、大部分のHTLV-Iキャリアでは末梢血単核球のIFN-γ_i産生が亢進しており免疫不全は明かでなかった。 3.ATL患者及びHTLV-Iキャリアでのレジオネラ菌感染防御(Clin.Immunol.Immunopathol.80,325-332,1996,J.Leukoc.Biol.in press,1997)--HTLV-I陰性コントロール、ATL患者及びHTLV-Iキャリアの末梢血単核球を分離し、レジオネラ菌を感染させ、以後の単球内菌増殖を検討した。HTLV-Iキャリアでは、コントロール及びATL患者に比べ、レジオネラ菌の細胞内増殖抑制が著明に認められた。これはCD4陽性リンパ球からのIFN-γ及び単球からのTNF-α(tumor necrosis factor-α,腫瘍壊死因子)産生がHTLV-Iキャリアで亢進していることによった。
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