研究概要 |
(1)血友病患者について、HIV感染者7名および正常対象者6名から単核細胞を分離し、T細胞(CD4、CD8)、単球(CD14)、B細胞(CD19)の接着分子、活性化マーカーおよびサブセットマーカーを検討した。各マーカーの陰性コントロールにはthy1,2を使用した。接着分子として、β1(VLA-β1)(CD29),α4(VLA-α4)(CD49d),α6(VLA-α6)(CD49f),αL(LFA-lα)(CD11a),β3(CD61),β7,L-selectin(CD62L)を、活性化マーカーとして、HLA-DR,CD69,CD30,CD71を、さらにサブセットマーカーとしてCD45RO,CD26,β2-micro-globulinを測定した。T細胞に関しては、HIV感染によりβ3(CD61)が強度の平均および陽性細胞の割合が有意に低下していた。一方、β細胞と単球では、HIV感染の影響はなかった。今回の検討では、β3(CD61)の異常の病的意義の解明はできなかった。(2)ATL腫瘍細胞の検討では、3例中2列にリンパ節高内皮臍静脈Gly CAM-1のレセプター(L-selectin)の発現を認めた。皮膚型6例中3例に内皮細胞(E-selectin)のリガンドであるCLA抗原の発現を認めた。さらに、消化管浸潤を示した3例中2例に腸管粘膜内皮細胞MAdCAM-1のレセプター(intergrinβ7)の発現を認めた。以上、ATL腫瘍細胞に発現した接着分子の発現とその組織浸潤の間には密接な関係がことが示唆された。今後ATL症例を蓄積することにより、ATL腫瘍細胞と組織浸潤の関係を解明する予定である。(3)ATL腫瘍細胞では、ICAM-1の発現増強による腫瘍細胞間接着を介して、サイトカインの産生および細胞増殖を惹起すること報告した。今後は、HIV感染のある血友病患者におけるCD61の発現減少の意義について検討するとともに、リンパ節や悪性リンパ腫など組織に浸潤したリンパ球の採取を試み、成人T細胞白血病細胞の特徴と比較検討したい。
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