研究概要 |
コレステロール胆石症におけるコレステロール過飽和胆汁の生成機序の解明には,肝代謝のみならず胆汁酸腸肝循環の重要なルートである胆嚢および腸管における異常を明らかにする必要がある。今回は特に胆嚢ならびに小腸機能に注目し,それぞれ胆嚢収縮機能の異常,小腸通過時間および胆汁酸吸収能の異常の解析を行い,さらにそれらの異常が肝コレステロール・胆汁酸代謝に与える影響を検討することで,過飽和胆汁生成機序の理解に努めた。今回得られた成績を総括すると,(a)胆嚢収縮機能の良好な例では,胆汁酸の小腸通過時間および吸収能は健常者に比して遅延あるいは低下しておらず、胆嚢収縮により胆汁中胆汁酸プールが有効に使われて循環胆汁酸プール量は保持され,その結果胆汁中コレステロール飽和度は過飽和には至らないと考えられた。(b)しかし胆嚢収縮機能の不良な例では,胆汁酸の小腸通過時間および吸収能の遅延ならびに低下が生じ,胆汁酸プールが収縮不能により胆嚢にまた小腸通過時間の遅延により腸管内にそれぞれ隔離され,結果的には循環胆汁酸プール量は減少して,胆汁中コレステロール飽和度は過飽和へ傾くものと考えられた。(c)肝コレステロール代謝では、内因性の生合成はコレステロール胆石例ではむしろ対照例に比して低下していた。コレステロール過飽和胆汁の生成の背景には食餌由来の外因性コレステロールが、胆嚢収縮不全に関連した、あるいは小腸通過時間の遅延に関連した循環胆汁酸プールの減少とともに胆汁中コレステロール飽和度上昇に対して主役を演じていると考えられた。
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