研究概要 |
1.In vivoの系では、手術や肝生検によって得られた慢性肝疾患と肝細胞癌の組織と、実験的肝障害モデル(四塩化炭素障害)の組織を用い、マトリックスの分解系、合成系の動態の解明と、制御のメカニズムについて遺伝子学的に解析した。マトリックス分解系のマーカーとしてはmetalloproteinase(MMP)-I,II,III,IXとそのinhibitorであるtissue inhibitor of metalloproteinase(TIMP)-I、IIを,マトリックス産生系のマーカーとしては、各種コラーゲン(I、II、IV型コラーゲン)、糖蛋白(フィブロネクチン、ラミニン)を、さらにこれらの調節因子としてTGF-βを用いた。それぞれのmRNAの発現をノザーン法で解析したところ、肝線維化過程では産生系の増加が見られる一方、MMP-IIの増加・MMP-Iの減少がみられた。またTIMP-I,-IIは線維化過程でともに増加傾向にあった。また組織での遺伝子発現をIn Situ Hybridization法で検討したところ、MMP-IIは主に伊東細胞に発現されていた。これらのことは、肝臓におけるマトリックスは産生系、分解系両者が複雑に絡んでおり、特に分解系ではMMP-IとMMP-IIは異なった動態を示し、その制御機構も異なると考えられた。これらの成績は、雑誌“肝臓",Hepatologyに掲載された。 2.In vitro系では、各種肝癌細胞株(HUH-6、HUH-7、HUCC-T1)、胃癌細胞株、白血病細胞株を用いた。これらの培養系において、それぞれ分解系の遺伝子発現を検討したが、特にMMP-IIの活性化因子として新たにクローニングされたMT-MMPの発現形態を検討した。これら癌細胞株はMT-MMPを発現するがMMP-IIは示さず、癌細胞表面でMMP-IIが活性化されるものと考えられた。これらの成績はIn vivoの結果とともに現在論文作成中である。
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