我々はこれまでに、カテプシンEのcDNA及び遺伝子のクローニングに成功し、さらに、微量蛋白であるヒトカテプシンEの酵母を用いた組み換えヒトカテプシンEの大量精製を行ってきた。本研究はこれまでの成果を基に、カテプシンEの発現調節機構を解明し、病態、特に膵癌との関与を明らかにするものであり、これがひいてはカテプシンEの生理機能解明の手掛かりになるものと期待された。カテプシンEの病態との関連を検討したところ、免疫組織化学的解析で、カテプシンEが膵管細胞癌の100%(15例)に発現していることが認められた。正常膵では免疫組織化学的、酵素学的にも検出されず、膵臓でのカテプシンEの発現は癌特異的であった。カテプシンEが膵癌のマーカーとなる可能性を検討するため、膵癌例の血清及び膵液中のカテプシンEの存在を、ウエスタンブロットで解析したところ、血清中には検出できなかったが、膵癌例の膵液に高率に(5例中4例)認められた。我々は酵母を用い組み換えヒトカテプシンEを精製し、さらに、抗カテプシンEモノクローナル抗体を作成し、これらを用いenzyme link immunosorbent assay(ELISA)システムを確立し、カテプシンEの定量測定を簡便化した。ELISAにより膵癌、慢性膵炎例の冷凍保存膵液中のカテプシンEを定量し、膵癌診断能を検討したところ、膵癌では11例中8例(72。7%)、膵炎では43例中4例(9.3%)に膵液中のカテプシンEが認められ、膵液中のカテプシンEは膵癌のマーカーになりうると考えられた。
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