研究概要 |
Helicobacter pylori関連胃粘膜疾患において、Helicobacter pyloriの有するウレアーゼは重要な役割を演じている。我々はウレアーゼによって生ずるアンモニアの胃粘膜障害性を検討してきたが、さらにアンモニアが好中球由来の次亜塩素酸と結合し、モノクロラミンとして様々の影響をきたすことが考えられる。今回はアンモニア、モノクロラミンの胃前庭部のG細胞よりガストリンの合成、放出および胃粘膜細胞増殖作用に対する影響につき検討した。胃粘膜細胞増殖作用に対する影響についての検討では、アンモニア長期投与がラット胃粘膜に及ぼす影響につき壁細胞数、BrdU取り込みの面より検討した。雄性SDラットを用いてアンモニウムクロライド(NH4C1)0.5,1,2,3%を6,12,24週間連日投与した。その結果、アンモニア投与群において胃粘膜壁細胞の増加が認められた。一方、アンモニア投与に加えさらに次亜塩素酸を投与した群においては、表層上皮層の増加が認められ、壁細胞の減少が認められた。ガストリンの合成、放出について、in vivo,及びin vitroの検討にてアンモニア、モノクロラミン両者ともに促進的に作用した。以上は、Helicobacter pylori感染者においては、Helicobacter pyloriの有するウレアーゼにてアンモニアの産生を介する胃粘膜障害をきたすことに加え、アンモニアが壁細胞数を増加させる可能性を示唆する。実際にHelicobacter pylori感染十二指腸潰瘍患者においては、胃壁細胞数の増加が特徴的であり、この実験結果を指示するものである。この結果をふまえ、今後は、同じくHelicobacter pylori感染でありながら、壁細胞数の減少をきたす症例についてその原因に関する検討が必要である。
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