研究分担者 |
福田 和人 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
乾 由明 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
伊藤 信之 大阪大学, 医学部・附属病院, 医員
田村 信司 大阪大学, 医学部, 助手 (30243223)
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研究概要 |
肝細胞の癌化に伴って、TGF-βに対する反応性を失い、増殖抑制機構から逸脱することより自律的増殖能を獲得するという立場より、ヒト肝発癌の分子機構の解明へのアプローチを行っている。 本年度において、我々は、チオアセタマイドを飲水に混じてラットに投与し、肝硬変を作成した。この硬変肝よりコラゲナーゼ潅流法を用いて肝細胞を単離し、正常肝より単離した肝細胞と増殖因子(EGF,HGF,HB-HGF)および増殖因子(TGF-β,IFN-α,IFN-γ)に対する反応性について比較検討した。また、TGF-βII型受容体の発現についてもNorthern法を用いて検討を加えた。 その結果、増殖因子(EGF,HGF,HB-EGF)に対する反応性はいずれについても硬変肝と正常肝細胞との間で差を認めなかった。一方、増殖抑制因子(TGF-β,IFN-α,IFN-γ)による増殖抑制については、硬変肝細胞において有意の反応低下が認められ、硬変肝細胞では増殖抑制がかかりにくくなっていることが示唆された。さらに、TGF-β受容体の発現低下が関与していることが示唆された。 以上より、硬変肝細胞では、TGF-βを中心とする増殖抑制因子に対する反応性が低下しており、この反応性の低下は、受容体の発現異常によることが示唆された。この増殖抑制機構からの逸脱により、増殖能の亢進が惹起され、その結果、発癌に至ると考えている。
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