研究概要 |
Long Evans Cinnamon(LEC)ラットは,肝炎・肝癌を自然発症し,その発症には銅および鉄イオンの肝への異常蓄積が関与することが想定されている。われわれは,LECラットおよび同系ラットで肝病変を全く発症しないLong Evans Agouti(LEA)ラットではエタノール投与により血中アセトアルデヒド濃度が著増して死亡することから,何らかのエタノール代謝異常が存在することを見出した。本研究ではエタノール代謝に関与するアルコール脱水素酵素(ADH)・アルデヒド脱水素酵素(ALDH)・P450 2E1について遺伝子・酵素活性の変化について検討した。まず,LEC・LEAラット肝におけるADHおよびALDH活性が対照のWistarラットに比べて60-75%低下していたが,P450 2E1には変化は認めなかった。さらに遺伝子レベルでALDH2遺伝子コドン67にCAGからCGGへの点突然変異があることを明らかにした。さらにClaSS I ADH遺伝子第1イントロン内のTG繰り返し配列部位を含む領域をPCR法にて増幅して検討したところ,TG繰り返し領域のPCR産物はWistarラットではすべて80bp長であるのに対し、LECラットではすべて98bpであり,LECラットに18bpのinsertionがあると考えられた。また抗cytochromeP450 2E1モノクローナル抗体を用いたWestern bolt法で検討したところ,LECラットにおけるP450 2E1の蛋白発現量はエタノール投与前に比べて投与後で約8倍に増加しており,エタノールによりP450 2E1が誘導されることが明らかになった。以上のごとく,LECラットではALCH2遺伝子とADH2遺伝子に異常が見出された。
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