研究概要 |
本研究は主に虚血が惹起するごく軽微な胃粘膜障害の発生・修復過程を^<51>Cr-EDTAクリアランス法を用い研究することを目的とした.(1)実験動物の体温調節,潅流液の回収を自動化し,^<51>Cr-EDTAクリアランスの測定の能率化した.この改良のためより早く,より正確な^<51>Cr-EDTAクリアランスの測定が可能となった.(2)胃粘液は活性酸素の消去作用を有することがしられていたが,in vivoでの作用は明らかでなかった.胃に限局する虚血のみにより惹起される微細粘膜障害を^<51>Cr-EDTAクリアランス法で定量するモデル(Am.J.Physiol.266:G263-270,1994)で,胃粘液の役割をin vivoで検討した結果,胃粘液は微細虚血再潅流障害に対し防御的に働くことが示された(J Lab Clin Med 126:287-293,1995).(3)H_2受容体拮抗剤,プロトンポンプインヒビターで内因性酸を抑制すると虚血による^<51>Cr-EDTAクリアランスの上昇は抑制された.しかし,リン酸緩衝液で内腔の酸を中和した状態ではクリアランスの上昇は抑制されなかったことから,この微細胃粘膜障害には分泌された酸自体は重要ではないが、ATPを消費する酸の産生・分泌が重要意味を持つことが判明した(J Clin Gastroeterol 21:S108-112,1995).(4)微細粘膜障害の迅速な修復(restitution)の速度は^<51>Cr-EDTAクリアランスの回復曲線の解析で,比較的簡便に定量化できたが,内因性粘膜および酸はほとんど関与しないと考えられた.(5)将来の門脈圧亢進症モデルの粘液障害の検討のため,^<51>Cr-EDTAクリアランスを指標とする下部虚血性粘膜障害モデルを確立を試みる過程で,下部消化管虚血は上部とは異なり致命的ショックを誘発することが判明した.本ショックは下部腸管微細粘膜障害と内毒素進入の関連の興味から研究をすすめたが,補体系がショックを誘発するカギとなり,また,微細粘膜障害に補体反応が重要であることを示す成績を得つつある.今後の研究の進展が望まれる.
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