研究概要 |
血清ACE値はサルコイドーシス(以下サ症)の診断や活動性の指標として重要な位置を占めている.サ症の血清ACEは,主として単球,マクロファージ,類上皮細胞由来と考えられており,全身の肉芽腫の総量を反映していると言われている.しかし,われわれは日本人において健常人のみならずサ症患者においても,ACE遺伝子多型が血清ACEレベルを規定することを明らかにした.さらにACE遺伝子多型が弱いながらサ症の危険因子となる可能性があること,および重要な予後因子であることを報告してきた.サ症の病態には人種差があることが知られており,本研究の目的はわれわれの日本人で得られた知見が人種を越えて他国でも確認されうるかを検討することにある.スウェーデンのKarolinsaka病院のサ症患者(Sa)群80人,健常対照者(Co)群65人,同様にフィンランドのMjolbolsta病院のSa群59人,Co群70人を対象とした.各対象者のACE遺伝子型(II, ID, DD)および対立遺伝子(I, D)の頻度を同定し,同時に血清ACE活性を測定した.スウェーデンにおける各対立遺伝子の頻度は,Co群でI: 0.54, D: 0. 46, Sa群でI: 0.51, D: 0.49,同様にフィンランドでは,Co群でI: 0.49, D: 0,51, Sa群でI: 0.42, D: 0.58であった.両国のSa群とCo群の遺伝子型および対立遺伝子の頻度に有意差を認めなかった.しかし,血清ACE活性は,両国のCo群で遺伝子型DD, ID, IIの順に高値を示し,Sa群でも同様な傾向を示した.サ症の血清ACE値の評価にはACE遺伝子型を考慮した正常参考値が必要性が再確認された.われわれの日本人の検討においても,ACE遺伝子型は危険因子より予後因子としての意義が大きいと考えられ,現在両国の患者の臨床データを解析中である.
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