研究概要 |
I. K-ras,p53,N-myc遺伝子の異常と、CDDP,CBDCA,MMC,Epi-ADMに対する薬剤感受性との関連性を、ヒト培養肺癌細胞29株を用いMTTassayにて検討を行った。その結果、N-myc遺伝子の増幅を有する肺小細胞株(2株)は、他の細胞株に比し上記抗癌剤に対する感受性が劣っていた。しかし、K-ras遺伝子異常やp53遺伝子異常と、薬剤感受性との間には有意な相関は認められなかった。以上の事実より、N-myc遺伝子の増幅が薬剤耐性において何らかの関与をしていることが示唆された(Oncology Rep,2:277-280,1995)。 II. N-myc遺伝子と薬剤耐性との関連性を更に明らかにするため、試験管内でCDDP耐性細胞株(H69/cp,SBC-4/cp)を作成し、耐性株におけるN-myc遺伝子の増幅および表現の程度が親株に比しどう変化するかを検討した。その結果、いずれの耐性株においても、親株に比しN-myc遺伝子の増幅および表現には有意な変化は認められなかった。この事実は、耐性度とN-myc遺伝子増幅の程度とは直接関連しないことを示唆している。よってN-myc遺伝子の薬剤耐性への関与に関しては、別の角度から検討する必要があると思われた(Oncology,53:417一421,1996)。 III. N-myc遺伝子の開始コドンを含むアンチセンスDNAを合成し、N-myc遺伝子の増幅を有する小細胞肺癌株(H69,SBC-4)に対し、CDDPとの併用殺細胞効果を検討した。その結果、アンチセンスDNAを併用することにより、CDDPの殺細胞効果が減弱するとの結果が得られた。その理由として、アンチセンスDNA処理によりDNA合成が抑制され、その結果CDDPに対する感受性が低下したと推察された。アンチセンスDNAと抗癌剤との併用療法を考える際、このような問題の生じることが示唆された(Anticancer Res,15:37-43,1995)。
|